絵筆とコードの時空間を超える対話

台北でのジェネラティブアート展示会について

目次

はじめに

 こんにちは、アンです。最近、台湾を拠点として活動している組織のVolumeDAOから誘われ、fx(hash) 2.0に新作の「unTie」を出品しました。また、12月15日の夜に台北でテーマは「繋 Ties」というアートサロンを行いました。自分の作品の展示風景を現場で見たかったため、11日から16日まで台北に行きました。大勢の方に来場していただいたことに感謝します。12月、台北で他にもいくつかのアートやジェネラティブアートについての展示会があります。「INFLUENTIA」「Kuo Hsueh-Hu And Generative Artists: Landscape Across Centuries」「2023 Taipei Biennial」を見に行きました。そのなかで、「Kuo Hsueh-Hu And Generative Artists: Landscape Across Centuries」を13日、14日に2回鑑賞しました。今回のブログで、その展示会について詳しく話します。

展示会の概要

展示会のポスター
 テーマは日本語に翻訳すると、「郭雪湖とジェネラティブアーティストたち - 100年を超えた風景をめぐる対話」です。郭雪湖(1908-2012)は、1908年台北で生まれ、日本統治時代の台湾の画家であり、近代台湾を代表する影響力のある画家の一人として知られています。キュレーターが台湾アーティストの王新仁・林経堯・黄新・陳依純・陳普・劉乃廷6人を誘いました。作家たちが郭雪湖の《南街殷賑》、《塔山煙雲》、《滿庭香》、《淡江泊舟》などの作品を再考し、デジタルのツールを使って新作を作りました。また、テーマ、メディア、構図、色彩など、さまざまな視点から検討し、アーティストの表現に無限な可能性を与えました。 同時に、アルゴリズムとAI技術が郭雪湖の創作の世界を再解釈し、歴史と現在のつながりを示しました。

作家たちとの対話

 12月13日、14日に2回ギャラリーに行って鑑賞しました。13日は1人で行きましたが、14日にもう一回行くとき、作家の王新仁・林経堯・劉乃廷が現場にいたので、直接作家たちと色々話しました。これから、3人との会話から知った作品制作の裏話と作品について紹介します。

王新仁:AIには意図的に絵の一部だけを学習させた

 今回、王は3つの作品を作りました。3つは一つのシリーズの「Bridging Eras」になります。作家が郭雪湖の絵画をAI(Stable Diffusion)に与えて学習させました。そして、勉強した内容により、AIが新しい画像を生成した。作家が生成した画像をp5.jsを用いて読み込み、もう一回プログラミングしました。最後に、AIやp5.jsなどのデジタルのツールを使って得たアウトプットを印刷しました。使用したメディアは黒いアルミ板です。

郭雪湖《塔山煙雲》(左) vs 王新仁《Bridging Eras #Landscape》(右)
 私は創作のなかにAIを使ったことがないので、作家とAIの部分をたくさん話しました。驚いたのは、王がAIに意図的に絵の一部だけを学習させたことです。「そうしないと、AIは自分が何を学んでいるのかすぐに理解してしまう。 AIがより創造的になるためには、AIが学習していることをすぐに理解できないようにする必要がある」と王は話しました。そのため、王は郭雪湖の絵画をいくつかの部分に分け、AIに別々に学習させました。 そして、AIが生成したパーツの画像を取り込み、それらを組み合わせて今回のシリーズを作成しました。作品に使われた色は、紙に印刷すると暗くなる可能性があるため、黒いアルミ板に印刷してみました。これで、色が鮮やかに見えます。

林経堯:京都を旅行中に突然何かを作りたくなった

 林は「台南小西門」という作品との対話を選びました。郭雪湖は「台南小西門」の制作にあたり、線で主要な建築物の輪郭を描き、異なる色調の黒で明暗の関係を表現しました。林はそれらを意識し、デジタル技術を駆使して筆触と輪郭線を実現しようとしました。シリーズ作品の「水郷四時」は、4つの異なる時間帯の水郷の建築風景で構成されています。

郭雪湖《台南小西門》(左) vs 林経堯《水鄉四時》(右)
 作品の中央から水平線によって上下に分かれています。 上部は建物の部分です。 下部は湖に映る建物の部分です。 作品の生成過程を見ると、建物と反射は同時に生成されることがわかりました。 作者は、下半分に歪みとずれを加えることで、反射の感覚を表現しています。作品のプリントに林はフレスコジクレーの紙を選び、「紙の凹凸のある質感を作品のベースに残したかった」と語りました。林は日本が好きで、特に京都が大好きです。そのため、1年間に何回も家族と京都へ旅行しています。今回の作品も、京都で建物や風景を見ながら最初のアイデアが生まれたそうです。

劉乃廷:これから93年間、私の作品は変化していく

 劉はp5.js を使用してフレームごとのジェネラティブ ペインティングを作成するのが得意で、彼の作品のテーマは主に具象的なオブジェクトです。今回もそうです。彼が得意とする具象的なオブジェクトを使い、現在の台北の街並みを描写します。

郭雪湖《南街殷賑》(左) vs 劉乃廷《Walk in Progress #0》(右)
 劉の新作の「Walk in Progress」は、郭雪湖の「南街殷賑」(1930年)を、時間を中心概念としてコードで表現したものです。印刷したのは変化している「Walk in Progress #0」の4つの段階の静止画です。1/4は、街風景の輪郭線です。2/4は、まだ塗りつぶされていない部分がいくつかあり、「これは過程である」ということを示す手がかりが残されています。3/4の第3段階は最終調整で、ライトが輝き始めるだけでなく、太陽の位置も低く沈みます。4/4の最後には看板は崩壊し、伝統的なメディアと都市開発の輪廻を表現しています。「Walk in Progress」というタイトルは、「Work in Progress(進行中の仕事)」にインスパイアされたもので、ほぼ1世紀にわたるこの2つの作品(郭の「南街殷賑」と劉の「Walk in Progress」)は、台北の進行中の都市開発の2つのWIPを表しています。
劉乃廷《Walk in Progress #0》1/4, 2/4, 3/4, 4/4
(作品のスクリーンショット https://akaswap.com/event/guoxuehuにより)
 作品のNFTはWalk in Progress #0のデジタル版です。ミントした後7日以内であれば、輪郭線の描写の完成までを見ることができます。7日から1ヶ月の間に、色とテクスチャの描写の完成までを見ることができます。1ヵ月後、全体の描写の完成までを見ることができます。93年前の1930年の郭の作品「南街の祭」を再考して「Walk in Progress」が作られました。それに対して、93年後には作品が崩壊し始めることを劉が設定しました。そのとき、作品を開くための対応ブラウザは存在するのだろうかと劉が言っていました。

さいごに

 今回は、主に「Kuo Hsueh-Hu And Generative Artists: Landscape Across Centuries」とそのなかの3つの作品について紹介しました。展示期間は2024年1月14日までです。ぜひ、台北に行ってみてください。台北で見た他の展示会も面白かったです。チャンスがあれば、またブログでみなさんに紹介します。