ジェネラティブアートとは

はじめに

 こんにちは、アンです。
 現在、聞いたことがない⼈がいないほど、世界中でNFTブームが起きています。私が注⽬しているジェネラティブアートの分野でもたくさんの作品が NFT 化しています。2021年、タイラー・ホッブス(Tyler Hobbs)のシリーズ作品《Fidenza》が販売されました。現時点で(2022年5月9日)、オープンシー(OpenSea)で販売されている合計999点の作品の総価値が45.9K ETH(約14,670,642,000円)になっています。NFTとNFTアートのブームのおかげで、私も含めてジェネラティブアートの作者が増えています。しかし、ジェネラティブアートとはいったい何なのでしょうか。今回、ジェネラティブアートの歴史を紹介します。

ジェネラティブアートとは

NoisePlanet_Echo_V4 - Samuel YAN, 2022 (https://openprocessing.org/sketch/1548117)

 簡潔に説明すると、ジェネラティブアートとは、ある程度の自律性を備えたシステムによって作成された作品、または人の介入がほとんどなくても機能できる作品を指します。言語ルール、マシン、アルゴリズムなどを使用して作者がシステムを設計します。設計したシステムに従って、作品が生成されます。これらのシステムは、デジタル、または化学、建築、詩、文学、アニメーション、視覚芸術など、さまざまな分野で実践されています。
 私の場合は、p5.js、processing、pythonなどのプログラミング言語を使って、ジェネラティブアート作品を制作しています。

ジェネラティブアートの歴史

萌芽

 19 世紀末に、ジェネラティブアートの芽が出始めました。キュビズムの原則の基礎を築いたポール・セザンヌのような芸術家たちは、彼らの作品の中で幾何学図形や、矛盾した視点などを使いはじめました。そこから、未来派構成主義がテクノロジーと機械を⽤いて 作品の魅⼒を広めます。その後、ダダイズムシュルレアリスム、抽象表現主義などの芸術運動が続きます。それぞれ、芸術を再定義しようとチャレンジしました。こうした芸術運動は、ジェネラティブアートの中心的な構成要素につながっています。

発展

 ビジネス用のコンピューターが登場した1960年代と1970年代に、ジェネラティブアーティストは、一つの部屋のような大きなサイズの計算機を使って、実験を行い、芸術とコンピューターサイエンスの関係を研究し始めました。1965 年にドイツのシュトゥットガルトで、初めての精選されたジェネラティブアートの展覧会が開催され、ゲオルク・ニース(Georg Nees)の作品が注目されました。その後、パイオニアであるニースとフリーダー・ナーケ(Frieder Nake)は、別の展覧会で彼らの作品を一緒に展示しました。その展覧会(Computer-Grafik (Nake & Nees))では、プログラムされ、コンピュータで制御されたドローイングマシンが制作した作品が特集されています(Generative Art: Origins, Artists, and Exemplary Works - Invaluable)。

Polygon of 23 Vertices (23-Ecke) — Georg Nees, 1964
13/9/65 Nr. 2 ("Hommage à Paul Klee") - Frieder Nake, 1965

 その間、⼥性の作家もジェネラティブアートの分野で活躍しました。たとえば、ジェネラティブ・アーティストで研究者のリリアン・シュワルツ(Lillian Schwartz)は、1968年から34年以上にわたってベル研究所のアーティスト・イン・レジデンスをつとめました。彼女は、MoMAが買い上げたはじめてのジェネラティブ・アートの作家としてよく名前があがります(Why Love Generative Art? — Artnome)。

Pixillation, photographic film stills - Lillian Schwartz, 1970

現状と展望

 コンピュータの普及で、アーティストたちがアルゴリズムを使用し始めました。数⼗年にわたって、芸術をコード化することができるコンピュータ・プログラムは、1990年代後半に開発されました。これらの革新があるため、コンピュータさえあれば、誰でもジェネラティブアートを作ることができます。2014年から、人工知能の飛躍的な発展により、AIが生み出すジェネラティブアート(AIアート)は開花しました。人間の脳のように考えるアルゴリズムが設計されており、ジェネラティブアートを制作することに成功しています。

ジェネラティブアートの種類

 今まで紹介したのは、最も一般的なタイプのジェネラティブアートであるビジュアルアート(視覚芸術)の分野の作品です。世界中のアーティストは、さまざまな⾃律的なシステムを⽤いて、有機的な⾃然界のものから⼈⼯的なものまで、さまざまな作品を制作してきました。コンピュータが利⽤しやすくなったので、コンピュータをベースとしたジェネラティブアートが増加しています。⽂学、⾳楽、建築、詩など、他のさまざまな分野でも実践されています。

ジェネラティブアートの魅力

 他のジャンルの芸術と⽐べ、私にとってジェネラティブアートの魅⼒がいくつかあります。これから、p5.jsを使用した自身の作品例を挙げながら紹介します。

ランダム性

 ランダム性は、ジェネラティブアートの⼀番魅⼒があるところだと思います。random関数を使って、色、位置、線の太さなどにランダム性を与えると作品に変化が生まれます。ランダムな値のおかげで、コードを実⾏するたびに異なる画像を⽣成し、さまざまな出⼒が⽣まれます。
 たとえば、次の画像では、色、線の太さ、幅の広さなどをrandom関数で設定しました。

MetalWave_3.0 - Samuel YAN, 2022 (https://openprocessing.org/sketch/1559761)

対象の可変性

 アルゴリズムやシステムを作った上で、「対象(object)」を変換すれば、生み出される結果(画像などの出⼒)が変わります。ここでの「対象」は、円、四角形、三⾓形、線などの基本的な幾何学的図形だけではなく、複数のシンプルな図形を組み合わせて作った複雑なパターンや模様も含まれます。
 たとえば、次のシリーズ作品の《urbanME》で、「対象」に異なる要素を入れることで結果が変わりました。

urbanME series - Samuel YAN, 2021~ (https://openprocessing.org/curation/73130#)

双方向性(インタラクティブ

 インタラクティブとは、相互に作⽤する、対話的な、双⽅向の、相乗効果の、などの意味を持つ英単語で、メディアコンテンツでは、 内容を利⽤者に⼀⽅的に与えるのではなく、利⽤者の働きかけにより刻々と内容が変化することをインタラクティブであるといいます(IT用語辞典e-Words)。アートの場合は、インタラクティブアートというジャンルや分野が存在します。ジェネラティブアートでも双⽅向性(インタラクティブ)がある作品が作れます。
 たとえば、次の作品では、外部の⾳源の⾳量によって、画⾯の中の点が移動しています。

Pulse Wave_1.2.2 with Music - Samuel YAN, 2022 (https://openprocessing.org/sketch/1546845)

さいごに

 ジェネラティブアートの歴史を遡って、歴史的な作家や作品を紹介しました。最後に私にとってのジェネラティブアートの魅力にも触れました。今回、たくさんの文章を読んだことで、ジェネラティブアートの分野でパイオニアたちが試行錯誤したことや考え方を知ることができました。この調査を、今後の私の研究と制作に役立てていきたいと思います。